開催にあたってのご挨拶

第62回日本交通科学学会・学術講演会

会長 西山 隆(沖縄県立中部病院救急科部長・救命救急センター長)

この度2026年9月14日(月),15日(火)の日程で第62回日本交通科学学会・学術講演会を主催させていただくことになり,このような貴重な機会を与えていただきました関係者の皆様には心より感謝申し上げます。

日本交通科学学会は1962年に設立された交通科学協議会を引き継ぐ学術団体で,交通安全を目的として交通科学に造詣の深い工学,医学,行政などの専門家が相集った学術集団です。我が国では戦後のモータリゼーションの急速な発展にはじまり,第一次交通戦争(1970年頃)及び第二次交通戦争(1992年頃)を経て,21世紀を迎え現在に至るまで交通安全は社会の大きなテーマであり続けてきました。

 

この間,本学会では「オールジャパンで交通事故死傷者低減」を目指しながら、各分野の現状と課題を整理して交通安全について考えてきました。1886年に世界初のガソリン自動車の特許が取られて以降,自動車の開発や関連産業の発展は多くの人の知るところです。その後約100年を経過した1990年代以降の自動車技術の急速な進化には目を見張るものがあり,特にバッテリー性能の進歩に伴う電気自動車(EV)の普及は,車両そのもの性能とともに自動運転の技術を革新的に発展させ交通安全を取り巻く環境に多大な変化をもたらしつつあります。

一般に交通事故の8割はヒューマンエラーとも言われ,その多くは「車」ではなく「人間」が要因となって発生していると言われ,そのため自動運転の実現でシステムが運転操作をするようになると,安全や事故形態について少なからず変化をきたすものと思われます。我が国でもすでにAEB*をはじめとしたADAS **による自動運転レベル2は多くの車で実現されており,一定の条件下で自動運転システムが運転操作を実行する自動運転レベル3の車も発売されています。2023年には特定条件下での運転者がいない自動運転レベル4の移動サービスが実現し公道を走行しており,いわゆる自動運転レベル5の完全運転自動化は決して遠い未来の話ではなくなっています。

 

今回のテーマは「交通安全のこれからと将来〜自動運転と交通事故〜」とさせていただきました。これまでにも本会では自動運転に関する発表はありましたが,改めて従来の知見を集め吟味された今の社会とその明日を,さらにそのずっと先の未来を見据えた将来という意味で,新たな交通安全について議論ができればと考えています。もちろん,テーマ以外の交通科学に関する演題の応募もお待ちしておりますので,今までの皆様の研究成果やご経験の報告をお待ちしております。現在,関係者一同で鋭意準備を進めていて,来るべき日に皆様と共に充実した学術講演会を築き上げ新たな知見や展望を得ることができることを楽しみにしております。

 

また,本会は「ITMA (The International Traffic Medicine Association), 27th World Congress in Tokyo(9月15日〜17日,滋賀医科大学社会医学講座法医学部門 一杉正仁会長)」と共同開催という形式で一橋講堂(東京都中央区)に於いて行われる予定ですので,両学術講演会への皆様のご参加を心よりお待ちしております。

*AEB = Automatic Emergency Braking:自動緊急ブレーキ

**ADAS = Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム

開催概要

開催期日

2026年9月14日(月)、15日(火)

会場情報

〒101-8439 東京都千代田区一ツ橋2-1-2一橋講堂 学術総合センター内